店内奥の個室に通され暫く待っていると、店員さんがセーム革のようにも見えるアイボリーの布カバーをかけたトレイを持って現れました。
カバーがめくられると、保護フィルムが付いたままのエクスプローラーが現れました。
金、銀、黒。イエローロレゾール。
好きな方には堪らない配色なのでしょう。
「フィルムははがせませんが、遠慮なさらず、どうぞご覧ください」と促され、おずおずと手に取ります。
あまりベタベタと触れぬよう気を付けながら、自分のエクスプローラー2と大きさや重さを比べてみました。
そのイメージや感触が、好ましい引き寄せに繋がったら嬉しいだろうなと思いつつ、トレイに戻し、店員さんに御礼を申し上げました。
店員さんはクラスプ(ブレスレットの留め金具)を外して「ここが今お持ちのモデルと大分違うと思います」などと解説してくれました。
確かに金属プレートが随分と肉厚になっており、作りも堅牢になっています。
これも頭の中のイメージを深めるのに役立つように感じました。
入手の困難さ、在庫を紹介できる機会の希少性を訴える店員さんの言葉を伺ううちに、私の頭の中にはいくつかの思考が湧いてきました。
「形は紛れもなく、エクスプローラーだ」
「やはり私にはまだゴールドの良さが分からない」
「色以外は希望通りだ」
「センスのない私にはオニヤンマっぽく思えてしまう…」
「ここで購入すれば初回訪店で引き寄せ達成などと書ける」
「代替品は1発で引き寄せることができたと書くべきだろう」
「希少価値はこちらの方が断然上らしい」
「普段使いする時計に希少価値が必要か?」
どうも、あまりよい兆候には思えません。
そこで私は「いま、自分は心地よさを感じているだろうか」と自問してみました。
瞬間、自問すること自体、心地よいとは感じていない証拠であると結論づけました。
こんなときは、自分に正直でいることが、引き寄せ生活のコツのひとつです。
店員さんの説明が終わるのを待ち、ひと呼吸置いてから、伝えました。
「こんな幸運はなかなかないのだと思います。ここまでご丁寧に説明いただいたうえで購入しないのは失礼なのかもしれません。でも、私はやはり、モノトーンのエクスプローラーが欲しい。ごめんなさい」
言い終えて、少し、ほっとしました。
ほっとできたことで、心地よさを取り戻せたように感じました。
心地よさを取り戻せたことで、自分の選択が間違っていないことを確信し、さらに安心しました。
店員さんは「こちらこそ、ご希望の商品を紹介できず申し訳ありません。お客様の拘り、よくわかりました。在庫次第ですが是非、ご紹介させていただきたいと思います」などと仰り、名刺を下さいました。
私は丁寧に御礼を述べ、貴重な機会に恵まれた幸運に感謝しながら、お店を後にしました。
マラソン初日で入手という引き寄せは、実現しませんでした。
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